シネマ・リハビリテーション

30歳になって感性が変わったのか、映画が見れるようになったので、せっかくだし、作文以下の感想を書いていきます

『City of God』(2002) :: 神がサイコロを振った出目はいつまでも残り続ける

 

シティ・オブ・ゴッド [DVD]

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 家を失ったような最貧困層が集まる街で育った少年たちが、成長し、マフィアを作り、そして抗争をしそして死ぬ、という話である。死ぬっていうと身も蓋もないが、そういう作品なので仕方ない。最初はチンピラが調子に乗っていたのが、街が成長するにしたがって、ちゃんとした暴力組織が出来上がる。さらにいうと、その暴力組織自体が治安を担っているという話も出てきて、なるほどなと思う。

 確かに、普通は警察が治安を担うはずなんだけど、思った通りというか、だいたい汚職とか賄賂の源になっていたりする。だからそういう「正式な秩序機構」が効かなかったりするものだから、余計に厄介だ。

 あとね、結構人が死ぬのよ。ネタバレだから言わないけど、本当にびっくりくらい死ぬ。開始30分くらいで死ぬ。

 話自体は、写真家志望の少年が語るという形式を取っている。

 なぜか「神の街」と呼ばれるようになったかはよくわからない。というより、映画で描かれている姿は、むしろ神が捨てたような街だ。そんなことを考えながら見てたら、ふととあるSFを思い出した。それは下のSF短編小説集だ。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

 

  この短編集に、『地獄とは神の不在なり』という短編が収められている。天使が「神の意志に基づいて」人を殺していくというそういう話なのだが、恐らくここで使われている「神」とは、まさにここで書かれているような「神」なのかもしれない。

 この作品において、悪い奴、悪くない奴、見境なく死んでいく。たぶんどちらかというと気のいい奴のほうが死にやすい傾向にある作品だと思う。本当になんでこいつが死ぬんだろうかと思うやつが死ぬ。たぶんそこにあるのは不公平な感触なんだろう。そして、その不公平な感触とはなんなのか、というところがポイントになるのだろう、と思う。

 ただ、この作品というのは「神がサイコロを振る」というような話ではないということだ。それらのサイコロの出目が重なりあって、物語を作っている。そのサイコロのどこが欠けてもうまくいかない形になっていく。それが感慨深さを増加させている。

 また、決して誰かが死んだり、殺されたからといって、そこでそいつの物語が終わりになるわけではない。彼らが残したもの=サイコロの出目が、のちのちにあって重要な役割を果たしたりする。

 また、個々のモノに対して、歴史があるということを示すの印象的だ。例えば、ヤクの売人が使っている部屋がどういう経路で受け継がれていったかを描いているのも特徴的だ。

 陳腐なところでいうと、ギャングのボスがあるシーンで立ち尽くす画面があるんだけれど、これはこれで、「同情はできないけど、こいつはこいつなりに辛い奴なんだな」と思ったりもする。そして、自分のせいで大切なものを失って八つ当たりをするシーンなんかも、なるほどと思ったりする。彼は彼に、暴力という手段でしか、世界に接するプロトコルを持っていないのだ。

 こういう作品を見ると、たいていは「貧しい地域は大変ね」みたいな教科書的な回答しかできないのかもしれない。が、ただそうやってサイコロの振った出目はまた新しい世代を生み出しているのだと思うと、面白いものだと思う。そして、その人々の出目を合わせているという意味で、やはりこれは「街」の映画であり、そこで育つということはどういうことなのか、という気持ちになるいい映画だと思う。